トランプ新政権が不動産業界に与える影響は?①
今回のアメリカ大統領選挙は意外性が大きく取り上げられました。メディアを含めた大半の予想が外れ、アメリカをある面で分断した公職未経験のトランプ次期大統領。選挙後には、規制緩和発言などで金融業界やウォール街での期待値が高まった分、円安ドル高になっていますが、不動産によって成功したトランプ氏は不動産業に関する方針や考えを未だ明確に打ち出していません。上院、下院ともに共和党が過半数を握る議会とトランプ次期政権は、不動産業界に果たしてどのような影響を与えるでしょうか?
全米リアルター協会(NAR)のチーフエコノミスト、Dr. ローレンス・ユン(Dr.Lawrence Yun)氏は、経済誌『フォーブス』に〝今後起こり得るであろう10のポイント〟を寄稿しています。
- 景気をさらに活性化するためのカンフル剤として、減税、公共施設の老朽化を防ぐ意味でのインフラ投資、強いアメリカを再び蘇らせるための防衛費などを、2017年の前半に打ち出すだろう。国内総生産(GDP)の上昇に伴い金利も上昇し始め、インフレが起こる。消費者購買意欲も上がり、それがさらに経済を押し上げる。経済成長が持続され生産性が上がれば、インフレはコントロールできる範囲内にある。雇用の増加は自動的に税収の増加に繋がり、経常収支の慢性的な赤字を減少することができる。
- アメリカの2017年の貿易収支は確実に広がるだろう。基本的に、経済が成長すればワインや車などに代表される消費文化が広がり、海外旅行や投資もさらに増えていく。これらは消費者が金銭的に自信を取り戻した結果、起こることである。反対に、保護主義によって関税が高くなれば輸入品を購入する金額も高くなり、消費が落ち込む可能性もある。輸出だけでなく輸入も減少するようなことがあれば、再びリセッションを招き、雇用が喪失されることにもなる。
- 株式市場は旋回運動を繰り返すだろう。ウォール街は政府の規制緩和に関しては諸手を挙げて歓迎するだろうが、保護主義的な貿易政策には不快感を露わにするだろう。アメリカの中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)のジャネット・イエレン議長が退任を迫られることになると、独立的な立場であるFRBへの政治介入と受け取られ、金融機関に混乱をもたらすことになる。金融市場の不確実性は、法人企業の直接投資を抑制させる大きな要因ともなる。歴史的な観点からすると、経済のダイナミズムはあくまでも「法の支配(Rule of Law)」の元にあり、政策の不確実性では成り立たない。法制度は大統領の独断や一部の者のためにあるのではない。
- サブプライムローン問題後、金融業界を規制し、消費者保護のために作られたドッド・フランク法(正式にはDodd–Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act)を、何らかの形で改正するだろう。プラス面には、各地に存在する10,000もの中小金融機関に対するコンプライアンスの緩和が挙げられる。地域の金融機関は、地元の不動産開発や建設ローンを担っている部分がある。緩和されれば住宅建設が促進され、現在の住宅不足の状況を打破できる。だが、大手の金融機関に限った緩和となると、今来た道を逆戻りする状況になり、またもや税金を使っての救済処置になりかねない。
- モーゲッッジ、いわゆる住宅ローンの審査基準の緩和により、もっと多くの消費者にローンが行き渡ることになる。現在は、過去の反省から基準値を上げて審査を厳格化しているため、従来ならば借りられた人が借りられないという状況になっている。この現象により最近起きたことの一つに、連邦政府による大手金融機関へのサブプライムローン関連の訴訟がある。次期トランプ政権が金融機関に対して明確なメッセージを送れば、市場はもっと活性化するだろう。
<Source: Forbes>