トランプ新政権が不動産業界に与える影響は?②

  1. モーゲッジ、いわゆる住宅ローンの審査基準の緩和により、もっと多くの消費者にローンが行き渡ることになる。現在は、過去の反省から基準値を上げて審査を厳格化しているため、従来ならば借りられた人が借りられないという状況になっている。この現象により最近起きたことの一つに、連邦政府による大手金融機関へのサブプライムローン関連の訴訟がある。次期トランプ政権が金融機関に対して明確なメッセージを送れば、市場はもっと活性化するだろう。
  2. 土地利用やゾーニングに関しての基準緩和も考えられる。それにより、住宅コストが抑えられる。最近は、既存住宅よりも新築の家の方が相当高い価格設定になっているが、住宅建設業者によると、その多くは資材や工賃の上昇ではなく、建設するためにクリアしなければならない規制や許認可に関する費用とのことだ。これは現オバマ政権のエコノミストが白書にも書いている事実である。トランプ政権はこれに着手するであろうが、法的な支配権が連邦政府にあるのか、各州の行政府なのかの判断は難しいところである。
  3. ファニー・メイ(Fannie Mae:Federal National Mortgage Association̶連邦住宅抵当公庫)とフレディー・マック(Freddie Mac:Federal Home Loan Mortgage Corporation̶連邦住宅貸付抵当公庫)の今後である。これらは日本の住宅金融支援機構にあたり、政府保証の住宅ローンで市場の70%前後のシェアを持っている。住宅ブーム時には放漫経営がたたり、数千億円もの税金を使って救済された過去がある。現在は経営陣が刷新され業績は好調、救済に投入された税金を完済するまでに至っている。これらをなくして民間にという案も過去にはあったが、リセッション後に政府保証の商業/投資ローンが付かなかった時期には、マーケットの90%の物件にローンが付かなかった時期もあり、住宅市場においても、政府系のローンがなくなると購買力の90%が落ち込むとも言われている。
  4. 地元に根付くコミュニティーカレッジ(日本でいう2年制の短大)は、政府の支援を受けやすくなるだろう。アメリカは電気工事士、溶接工、配管工やレントゲン技師などの技術を持っている労働者が不足している。卒業生の中から住宅建設に携わる者も出てくるだろうし、業界も彼らを必要としている。
  5. 台風、地震や山火事など自然災害による被害を多く受ける地域を「フラッドゾーン(Flood Zone)」と呼ぶが、新政権では連邦政府が支援していた役割や援助が減少される可能性があり、その地域に住んでいる人々の負担額が増加する可能性が高い。この連邦政府の保証プログラムは、過去の遺物であって機能していない。役割や援助を減少するのであれば、過去の遺物であるこのフラッドゾーンの地図を書き換える必要がある。
  6. 税制改革は実際に議論されている。そのゴールは、税法を簡略化することにある。現在の連邦税制法(U.S. Tax Code)は聖書よりも厚く、とても複雑である。これを簡略化していくと、住宅のオーナーが享受している住宅ローンの利息控除(Mortgage Interest Deduction)、固定資産税控除の削減(Reducing Property Tax Deduction)、キャピタルゲイン減税(Capital Gains Exemptions)の廃止などにもなりかねない。あるいは、米国では1031エクスチェンジ(1031 Exchange)で知られている等価交換による税金の繰り延べ(Like-Kind Exchange Tax Deferral)も対象になりかねない。ホームオーナーシップや個人が不動産を所有する権利に関しても注意を払う必要がある。

トランプ氏は不動産、特に商業不動産や開発案件で富を築いてきました。そして、これらの商業投資物件の負債などを理由に、過去29年間税金を払っていないことも公表されています。大統領候補になれば、資産や年収などを公開するもの
ですが、彼は未だに公開していません。

4回破産したとはいえ、不動産で財を成し、ニューヨークのマンハッタンで「コンドミニアム」という概念を生み出した人。自分をブランド「TRUMP」として売り出し、テレビ番組でも有名になった人物。今後、内政や外交だけでなく、不動産に関する政策をどのように打ち出すか見ものです。

<Source: Forbes>